第49回日本重症心身障害学会学術集会

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会長挨拶

第49回日本重症心身障害学会学術集会 会長
社会福祉法人愛徳福祉会 理事長
大阪発達総合療育センター センター長
船戸 正久

 この度、第49回日本重症心身障害学会学術集会を初めて大阪で開催させていただくことになり、心から光栄に思います。今回の学術集会のメインテーマを「重篤な障害児・者の方々のトータルケアを多職種協働でどのように大切に支援するのか?~QOL支援とQOD支援のベスト・プラクティスを目指して~」とさせていただきました。

 2011年私自身37年間勤務した淀川キリスト教病院を退職し、現在の大阪発達総合療育センターに異動して初めて「療育の世界」に足を踏み入れました。ここでの大きな学びと発見は“Life”の意味でした。その意味には「いのち」という意味だけでなく、「生活」と「人生」という大きな意味があるという当然の事実です。療育の世界は、病院の「パスの世界」とは違い、「個別支援」の世界であり、ここでご本人・ご家族の「意思決定」や「最善の利益」を中心に各専門職種が協働してトータルライフ・ステージをどのように大切に支援するのか、熱心に研究している現場の姿を知ることができました。

 「重症心身障害児の父」と呼ばれ島田療育園を創設した小林提樹先生は、その著書「福祉の心」(1975年)の中で、「保健医学」、「予防医学」、「治療医学」、「リハビリテーション医学」に次いで第五の医学として「生命医学」を提唱しています。「すべては生きるための医学であるが、重症心身障害児・者や老人ばかりでなく、私たちもやがて生を終わって死を迎える運命にあるのに、なぜ生にだけ医学は執念を燃やすのであろうか。死があって生がある筈であるのに、なぜ死にだけ医学は目をつむっているのであろうか。生命科学も死を抜きにしては考えられない筈ではなかろうか。私は、そこで、死に焦点をおいた医学を提唱したい。それは、第五の医学とも称すべきものであり、しかも生命医学と命名したいところである」と述べています。

 現在多くの利用者の方々の重症化・高齢化が進み、療育の現場で大きな倫理的課題になっています。そうした中今回の学術集会では、各専門職種が協働してQOL(Quality of life:いのちの質、いのちの輝き)支援と同時にQOD(Quality of death:死の質、看取りの質=Quality of dignityいのちの尊厳)支援のベスト・プラクティスについて共に考える機会としたいと思います。近畿地区でお願いしたプログラム委員の方々のご協力を得て、QOL支援とQOD支援に関する多くの魅力的な企画を提案していただきました。是非充実したベストプラクティスを追求する学術集会にしたいと考えています。会場は、大阪ではなく神戸ポートピアにある「神戸国際会議場」になりますが、多くの皆さま方の学術発表と現地参加を心からお待ちしています。

 最後に第6回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラムで発表された、「光と影の輝きについて」という田中千鶴子氏の素晴らしい言葉を紹介します。この学術集会が今後の「影のできない光の医療」を追求する学術的な場になることを心から祈念いたします。

「光と影の輝きについて」
 光が当たらなければ影はできない。
 光が当たると影ができ、光が強ければ強いほど濃い影になる。
 光が多方から当たると影はできない。
 それ自体が輝いていれば影はできない。
 (田中千鶴子「家族が願う子どもと家族のTotal Care」
  第6回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラム、2008年12月)

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